老いと花

還暦まであと1年半、日々の出来事や思い出を気ままに綴ります。

逃げる柴犬

 


 去年の12月、散歩をしようとチワワを連れて家を出ると、近くの公園の前で小学生たちが大騒ぎをしているのに気が付いた。用心しながら少しずつ近づくと、柴犬が子供たちを追いかけ回している。本人(犬)にとっては楽しく遊んでいるつもりだろうが、立ち上がると子供たちの身長とさほど変わらないため子供たちは逃げ惑い、小さなカオスが生まれていた。
 きっとこちらに向かって来るという確信があり、チワワを右手に抱き上げて左手を広げ腰を落とした。案の定、こちらに気が付いた柴犬は真っすぐに走り寄ってきた。首輪をしっかりと左手で掴む。唐草模様のバンダナ。可愛がられているのだろう。チワワはなぜかとても怒っている。一方の柴犬はすっかり落ち着いてじっとしていた。これからどうしよう。抱いて一旦、家に連れ帰ろうかとも考えたが、重くてとてもではないが抱き上げることなどできない。散歩の後に出かけなければならないが、その時間も刻々と迫っている。時間の流れがほとんど止まってしまっているような気がした。
 段々と途方に暮れ始めたその時、必死でこちらに向かって走って来る女性の姿が目に入った。「すみません。」「良かったです。」と同じフレーズをくどい程お互いに繰り返した後、チワワを道に下ろして散歩を再開した。そう言えば、柴犬に追いかけられていた子供の一人に「この犬はあなたの犬なの?」と尋ねると「違うよ。だって僕は猫が好きだもん。」と答えていた。
 写真は photo library https://www.photolibrary.jp より。