老いと花

還暦まであと1年半、日々の出来事や思い出を気ままに綴ります。

鳥は飛ぶ

 何年か前、家の近くで鳩が死んでいた。カラスの声が余りにもやかましいので何事かと表に出ると、車道の真ん中でうつぶせになっていた。車に轢かれたのだろうか、脚の辺りに血痕が見える。カラスたちは電線に止まって、何やら相談しているようだった。放っておくと、彼らに食い荒らされてしまうと思い、近くの公園に埋めることにした。家に戻り、スコップを持って近づこうとした時、一瞬、強い風が吹いた。鳩は、風にあおられた両方の羽を広げ死んだまま飛んでいた。その時初めて、鳥は死んだ後も飛ぶことを知った。
 公園の片隅に埋めた後、見上げるとカラスたちが異常な声で鳴いている。その声には激
しい怒りが満ちていた。その晩、獣医師をしている友人に事の顛末を話したところ「カ
ラスも、寝床にお腹を空かした子供たちが待ってるもんね。」と言われた。