老いと花

還暦まであと1年半、日々の出来事や思い出を気ままに綴ります。

バイバイ ベイビー

 今日、出かける時に下の居間からテレビのCM が聞こえてきた。「幸せってなんだろう」と誰かが言っている。
 10年ほど前に、友人の一人に誕生日プレゼントを渡したところ、「どうしよう。幸せになっちゃうかも」と言った。確か、四葉のクローバーを模ったガラス細工のキーホルダーだったと思う。思わず「今だって幸せじゃない。健康で毎日仕事もして」と言いながら、薄っらな台詞に我ながら呆れた。彼女の言葉は当時、何かにつけて自分が心の中で呟いていたものだったから。
 だが、60歳に近づくにつれいつの間にか「健康で毎日仕事もして」いる状態で満足するようになった。特に大きなエネルギーを必要としないうすぼんやりとした幸せ。40代、50代とあれほど「愛し愛される関係」にしがみついていたのが嘘のようだ。これが年を取るという
事なのだろうか。
 とはいえ、本棚にはいまだに「バイバイ ベイビー」が一番目につく場所に置かれている。自分で何もかもしていた(おむつも自分で替える)赤ちゃんが、ある日はたと「自分にはママが必要だ」と気づき旅に出るのだが、その途中でいろいろな動物やおじいさん、若い男の人、そしてついにママになっても良いという女の人と出会い最後は皆なで家族になるという話だ。一生懸命、求めていれば最後には欲しいものが手に入るというハッピイ・エンディング・ストーリー。この話に心惹かれている内は、まだ心のどこかで、いつか本当に欲しいものが手に入るかもしれないと期待しているのかもしれない。