老いと花

還暦まであと1年半、日々の出来事や思い出を気ままに綴ります。

100万回生きたねこの幸せ

 

   世界中で読まれている「100万回生きたねこ」を読んだのは、40歳をとうに過ぎてから
だ。きっかけはすっかり忘れてしまったが、大人になってから読んで良かったと思う。も
っと言えば、人を心から愛する経験を経てから読んで良かった。
 主人公の猫は、100万回、生まれては死に死んでは生まれ、その間、一度も幸せを感じることがなかった。だがある時、綺麗な雌猫と出会って恋に落ち子供が生まれ、やがて雌猫は老いて死んだ。その傍らで100万回泣いた後、自分もやっと死ぬ。本当に死ぬことができたのは、本当に生きることができたからだろう。
 半年前、ある人が「I have never felt happy in my life.」(これまで一度も幸せだと感じたことはない)とズーム画面の向こうで言った。そして先月、別の人が「今、これまでの人生で最悪の時期なんだ」と言っていた。それぞれが、他人との関係で苦しんでいるようだった。  自分の人生は自分にしか生きることはもちろんできないが、他人が大きく関わることは避けられない。100万回生きた猫のように、他人によって初めて本当の生を生きる事ができる場合もあるだろう。どのような他人とどのように出会うのか、それを自分で決めることはできない。それが悩ましい。
 写真は photo library (https:// www.photolibrary.jp) より。